なぜ、今、日本でDXが議論されるのか 〜 注43

公開: 2021年5月2日

更新: 2021年5月29日

注43. 高等学校の新教科「情報」の導入

21世紀に入って、文部科学省はこれからの人々が、情報の扱い方や利用方法として、社会生活をするために最低限理解していなければならないこと、知っておくべきことを高等学校の教科として教えることを決定した。さらに、工業系や商業系の高等学校では、将来、より専門的な仕事に携わることもできるように、少し専門的な知識も学べるよう、情報の科目を導入することとした。

文部科学省が準備した教科の内容には、コンピュータの歴史や動作原理、ソフトウェアの基礎としての簡単なプログラミングと、ソフトウェアの開発手順の概要、インターネットなどのコンピュータ通信に関わる基礎的な知識、インターネット上に公開される情報の著作権の保護とその利用に関する注意事項、さらに個人情報の保護の必要性と情報セキュリティ、そして情報の発信や利用のための倫理などが含まれていた。

この全く新しい教科を、高等学校の教育に導入するため、当時の文部科学省は、日本の各大学、特に直接関係する情報関連学科をもつ大学に対して、新教科「情報」の教員養成のためのカリキュラムを導入するように通達した。これに応じて数多くの大学に、新教科「情報」の教員養成課程が作られた。しかし、新教科「情報」の導入を急いだ文部科学省は、高等学校の教員免許を持ち、既に教員としてその職にある人々に、教科内容を教授して、新科目の授業をさせる方法も採用した。

当時、高等学校の教育現場では、ゆとり教育の影響で、数学、理科、家庭科などの教員人材に余裕があった。文部科学省は、これらの従来科目の教員に、新教科「情報」の教員養成課程を持つ大学で、集中的な講義を受けさせ、新教科「情報」の教員として認めようとしたのである。各地方公共団体の教育委員会は、これによって余剰人員を抱えることになっていた数学、理科、家庭科の教員に、新教科「情報」を担当させることで、その人々の雇用を維持できると考えた。

新教科「情報」の高等学校への導入は、この現任教員の再教育によって進んだが、教科の内容を生徒に教えると言う本来の目的は、二の次になっていった。元々、専門的な知識のない教員が教えることになったため、授業内容が質的に低下した。このような事情もあり、当初、大学入試センター試験での、新教科「情報」の実施を予定していたが、全国高等学校校長会の意見もあり、センター試験の実施は、先延ばしとなった。ここにも、変化を嫌い、従来からのやり方を踏襲しようとする日本式のやり方が根強く息づいていた。

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